ターンは苦手。すぐに、目が回ってしまう。ヴァーテイゴの診断を受けた私は、激しく頭を振ってから、ピケターンの準備をした。
私には、命に直接関わらないけれど、少し面倒なものが、幾つかあるのです。ヴァーテイゴは、そのひとつ。(日本でいう、メニエール病と同じものなのか、どうかは、わかりません)
初めての発作は、35歳の時。耳の後ろの、バランスを整える器官が(何の前触れもなく)間違った情報を脳に送り、平衡感覚を狂わせる。発作を起こすと、激しく目の前がスピンする。頭の中が四方八方に振られ、吐き気で呼吸困難になると、私はパニックアタック(これも厄介)になって、どうすることもできない。
一度、救急車で運ばれて、大変な目にあった。アメリカ(私の住む地域)では、救急車に乗るだけで、$1,500の請求が来るの。それに私の健康保険は、救急病院の利用金額が、1回につき、$500。毎月の保険料は$460 なのに、負担は重かった。
しかも、救急医療が私に出来る事は、あまりなくて。乗り物酔いの薬を、処方してくれる程度。ヴァーテイゴは治療ができないから、すぐに家に帰されてしまう。その後は、約6週間も、目眩と戦う日々。
介護をしていた時、そういうことを元夫の脳外科医に話したら「頭を激しく振るといい」と言われた。ヴァーテイゴに効く運動もあるらしいけれど、この方がシンプルで、即効性があると、担当医は話してくれた。
最初は、そんなことをしたら、かえって酷くなるんじゃないかと疑った。でも、憧れのシルビイ・ギエムが、ドキュメンタリーの中で、舞台の本番前に激しく頭をシェイクしているのを見て、やってみようという気になった。
大好きなバレエレッスン。
私は、自分が一番素敵だと思うやり方で、好きなように回転した。ジェシカは、何も言わなかった。褒め言葉はもちろん(時々、アビゲイルにする様な)手取り足取りの指導もなかった。
センターレッスンの後半は、ジャンプ。シャンジュマンを16回跳んだ後、シャッセとホップで、コーナー移動。鏡を見ると、私のシャッセは「オズの魔法使い」に出てくる、ロボットのスキップみたい。
「床を擦って」とか「膝を曲げて」とか、ジェシカが言っているけれど、私の脚は、全く、言うことをきかなかった。
レッスンが終わると、ジェシカが無言のまま、私の両手を握ってくれた。心は落ち着いたけれど、私は泣きたい気分だった。
「アメリカで、大人バレエ」は、続きますので、また読んでくださいね。よろしくお願いします。
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